はじめに
南部保健相談所(2001年から組織変更により南部保健福祉相談所に名称変更)は、新宿、渋谷、杉並区に隣接する都市化の進んだ地域に位置し、3歳児健診対象者数も年々減少している。1993年より「3歳児のう蝕罹患者率を30%以下に!(東京都歯科保健目標・2000年)」という目標の達成に向けて活動を開始し、区内で最も罹患者率の高い地域を区の平均まで低下させることができた。ことに、dft(う歯数/人)は区内で最も低下がみられ、目標以上の成果をあげることができたのでその方法と経過について紹介する。
取組みの経過
1.1993年度
1歳半児歯科健診、2歳・2歳半歯科経過観察時にアンケートを実施し、衛生にかかわる課題を一緒に考える状況を整えた。また、1人ひとりの子供に適したフッ化物の使い方などの情報を提供した。
3歳児のう蝕罹患者の多くは、毎日清涼飲料水を飲み、卒乳も1歳6ヶ月より遅い傾向にあったので、母親教室、両親学級、乳児健診時に口腔機能が理解できるよう体験学習に取り込んだ。
2.1994年度
成人歯科相談事業を母親が利用しやすいよう事業内容を組替えた。また、高齢者会館、地域まつりなど高齢者等を対象とした事業にも参加し、本人だけでなく孫の食生活改善のために糖分制限が必要であることの説明を繰り返した。
3.1995年度
乳幼児健診時にペリオ・チェックを使用して母親の歯周病の原因菌を測定するとともに、唾液を採取し、ミュウカウント及びLBキットを使用してう蝕活動性度を測定してその結果を母親本人に返した。また、1歳半児歯科健診時に母親(時には父親)の唾液を採取してミュウカウント及びLBキットを使用してう蝕の原因となる菌量を示すとともに、SMキットで児のミュウタンス菌の量を測定した。う蝕がみられなくても菌量が多い児については生活リズムを整えるよう、体を使った遊びや食生活を考え、親と共に実行できるよう工夫して指導した。
4.1997年度
1歳半児歯科健診時に、朝食ぬき、軟食の流し込み等に対応すべく、栄養士に協力を得て対象者全員に「食べ方」の個別指導を実施した。
5.1998年度
幼児の摂食を支援するため、幼児食を作って試食する摂食支援講座を栄養士と共に開始した。
3歳児う蝕の減少
出生当時から関わりをもった児には、その年齢に合わせた健康教育、相談などを実施しており、3歳児の時点で年々う蝕罹患者率は低下した。特に1995年度から1997年度まで、乳児健診、1歳半歯科健診時、母親、乳幼児の口腔内の菌量調査を実施するとともに、その結果を個々の食生活と照らし合わせながら評価することで、3歳児のう蝕罹患者率を1992年の42.0%から、1996年には16.3%へと低下させ、2000年の目標であった30%を遥かに下回った(図1)。
また、同様に1992年度に1.87であった3歳児のdftは、1999年度に0.56、2000年度には0.48まで低下した。1999年度の全国平均は1.7であることより、その効果は明らかである(図2)。
まとめ
このような成果をみることができたのは、地域への働きかけを軸に長期目標を立て、他職種と連携して計画的に事業を執行し、毎年活動結果を評価してきたことによると考えられる。今や、誰もがう蝕の原因を知っている。地域で子育てしている親が児の口腔衛生をどの様にとらえているか把握するとともに、より具体的な情報と習慣化しやすい予防方法を示し、納得して生活の中に生かせなければ改善はみられない。
今後とも、う蝕の原因菌を測定して栄養士指導に反映させるなど、(1)地域への働きかけを重視した事業 (2)科学的根拠をベースとした0次予防の視点に立った事業 (3)他職種と協働した事業 を推進するとともに、う蝕のリスクの高い児に対する個別のフォローについても取り組んでいきたい。